新規顧客を魅了するオートオルロジュリーとは

2017年にユリス・ナルダンの最高経営責任者(CEO)に任命されたパトリック・プルニエは、2018年8月にケリングのもう一つのマニュファクチュールであるジラール・ペルゴのCEOに就任しました。SIHHにて、市場に対し更に大胆で熱意あるアプローチを行うよう、業界に働きかけるという自身の野心について語ります。

Patrick Pruniaux
Directeur Général d’Ulysse Nardin et Girard-Perregaux

オートオルロジュリーの2019年の展望は?

高級時計市場は、2015~16年の業界危機から完全に回復し、他のラグジュアリー市場に近いパフォーマンスレベルに戻り、業界の変革も進んでいます。。店頭の顧客体験への投資と並行して、流通業界では生産性を高める動きが発生しています。オンライン流通の分野でも、大きな可能性を秘めた変化が起こっています。時計販売におけるeコマースの現在のシェアはわずかですが、高級時計を愛する顧客層の創出に役立っていることは間違いありません。近い将来、あらゆる顧客体験がオンラインから始まることになるでしょう。そしてこの3年間、多くの大手時計メーカーで経営者の世代交代が行われ、業界に新鮮な活力をもたらしました。

顧客という観点からはどうですか?

顧客の購買行動には、新たな傾向が見られます。もちろん、従来の購入動機も健在であり、20~30年後に子供が受け継ぐことのできるような、価値が持続する時計が求められています。その一方で、若い世代の嗜好の変化に伴い、この世代の新しい顧客が時計に求めるものも変わってきています。以前は、クラシックで洗練された、落ち着いたスタイルの時計が人気を集めていました。この傾向は、特に中国で顕著でしたが、今日ではスポーティーなデザインが多く、ブランドのストーリーを伝えるメッセージ性の高い製品がトレンドになっています。つまり、消費者は、高級スニーカーや高級車と同じように、自分の個性を表現する機会を与えてくれる時計を求めているのです。これは、オートオルロジュリー業界にとって大きなチャンスです。時代を超えて受け継がれる高い品質を備え、かつ個性を表現できる時計を手に入れることができるのです。デザイナーの服や革製品などを買うときと同じ気持ちで高級時計を買うことができると考えています。緊張感を持たずに気軽にかつより頻繁に高級時計を購入できる環境を作る事が必要です。

ユリス・ナルダンやジラール・ペルゴでは、伝統と感情をどのように調和させていますか?

私たちは、受け継がれてきた豊かな遺産の延長上に自らの立場を置く必要があります。ジラール・ペルゴとユリス・ナルダンには、それぞれ170年以上の歴史があります。その伝統は、特に素材の品質や製造工程において尊重しなければなりません。一方で、どちらのマニュファクチュールも、顧客体験やブランドストーリーとともに、製品の設計においても革新的であり続ける必要があります。グッチが示したように、消費者の関心を喚起するためには、新しい美学を追求する必要があります。グッチはこのアプローチを採用し、ご存知のとおり成功を収め、私たちが見習うべき手本となりました。ユリス・ナルダンがSIHHで発表した「Freak X」は、このようなアプローチの好例です。2019年は、新しいオーディエンス、特にミレニアル世代(1981-1996年生まれの世代)を惹きつけることを目的として、大胆で現代的なデザインの「Freak」コレクションをさらに発展させる予定です。ジラール・ペルゴについては、「Laureato Absolute」で同じくより積極的に新しい美学を反映しています。。どちらの時計も圧倒的な革新性を示していますが、両メゾンの歴代の経営者たちが誇りに思うような素晴らしい作品になると信じています。

Ulysse Nardin at SIHH 2019

SIHH 2019での展示についてお聞かせください。

この展示会は、2019年に我々が展開するアイデアや、メゾンの歴史に根付いたストーリーを紹介する素晴らしい機会です。ジラール・ペルゴは「天と地」をテーマに、ユリス・ナルダンは「Disorder(無秩序)」、あるいはブランドに異なるコンセプトが多々存在する中で生まれる緊張感の表現を探求しています。

2019年の新作は、消費者の印象に残り、情熱を与えるような説得力のある商品を発表するべく、我々の空間の使い方やメゾンが語るストーリーを最大限に表現します。専門メディアなどのパートナーに驚きと感動を与えることが目的です。ユリス・ナルダンはSIHHのブースを活用するにあたり、天井からサメのケージを吊り下げ、独占的パートナーシップ契約を結んだエロティック・アートの巨匠、ミロ・マナラの作品を展示する予定です。それは、我々の現代性と独創性をアピールできる機会です。