カスタマイズ製品こそが、アイウエア マーケットで成功するための鍵

ケリング グループは、傘下のブランドのアイウエア事業を2014年に一つに集約したことにより、マーケットの変化に対応する能力を強化し、イノベーションのレベルと収益性を引き上げることができました。ケリング アイウエアの代表取締役兼CEOを務めるロベルト・ヴェドヴォットが戦略における方向転換を振り返り、ヴェドヴォット率いるチームが、絶え間ない成長と変化を繰り返すアイウエア事業に今後どのように立ち向かうかについて語りました。

Roberto Vedovotto
President and CEO of Kering Eyewear

2014年にケリングは、グループが擁するブランドのアイウエアライセンスを業務委託ではなく、グループとして統括する決断を下しました。このような決断にいたった理由を教えてください。

ロベルト・ヴェドヴォット:アイウエアは収益性の高い、大きなマーケットです。ケリング アイウエアはプレミアムフレームとサングラスの部門で成り立っており、卸売価格にすると、およそ130億ユーロという金額に上ります。現在、競合他社が多く、卸売価格で30億ユーロに相当するハイエンド部門に焦点を当てることで、このマーケットのさらなる開拓を進めています。業界に直接的なプレゼンスを示すことは意味があると考え、この3年半の間でケリング アイウエアは、部門においてイタリアのルックスオティカに次ぐ中心的存在へと成長しました。それも、ケリングが当初から抱えていた数々のすばらしいブランドのおかげです。アイウエアはラグジュアリーブランドにとって重要なカテゴリーであることを忘れてはいけません。というのも、新規のお客様に異なる製品カテゴリーに興味を持ってもらえるという理由から、手頃な価格で憧れのブランドを手にすることのできるフレームやサングラスの顧客転換率はもっとも高いのです。こうして、ケリングが擁するブランドのアイウエアライセンスを統括することは極めて当然のこととして受け止められ、最高水準のアイウエアと、それぞれのブランドのイメージやポジションにふさわしい流通を確立することができたのです。

この度の再編成の結果はいかがでしたか?

まずは、唯一無二のラグジュアリー アイウエア カンパニーをつくることを目標に、株主とケリングが抱えるブランドの両者が納得できるような革新的なビジネスモデルを立ち上げました。2013年11月の時点で、チームメンバーは私を含むたった3人でしたが、いまでは世界中で1,000人以上の従業員を抱えています。彼らはケリング アイウエアにとって大切な財産です。私たちの当初からの目的は、従来の“働き方”と決別し、迅速に変化に対応できる、効率的で組織的な構造をつくることです。そのためにも、異なる市場やプロジェクトに携わっている様々なチームと協力し、すべてのアクションの中心にデザインを据えることからはじめました。グッチ アイウエアとサンローラン アイウエアはそれぞれのブランドのクリエイティブチームのあるローマとパリに拠点を置いています。マーケティングとコミュニケーションという観点からは、ブランドとの絶え間ないコラボレーション、交流、チームとして働くことによって、それぞれのブランドのイメージとプラットフォームにふさわしい、包括的なアプローチ(デジタル面でのイニシアチブからイベントや店舗のVMD活動など)を展開することができるのです。

中国やアジア市場に特化した戦略をどのように打ち立てていますか?

アジアはケリング アイウエアをはじめとするすべてのラグジュアリー企業にとって極めて重要な市場です。ケリングでは、主に現地法人と厳選されたディストリビューターのネットワークを通して運営しています。アジア地域向けのトップリテーラーと戦略的パートナーシップを組み、市場でのプレゼンスを高める活動やイベント、またアジア地域向けのカスタマイズ製品やコミュニケーションを通し、アジア市場の顧客を獲得するための特別な戦略を打ち立てています。

中国だけでもケリング アイウエアにとっては可能性の宝庫です。しかし、国の規模を考えると、中国にはアイウエアのプレゼンスが小さい、あるいはまったくない小都市がいくつもあります。こうした都市の需要にきちんと応えながら、マーケットとして確立させるためにも、JD.com(2.9億人もの顧客を持つ中国最大のEコマースサイト)のプラットフォームにて初の旗艦店をオープンすることを決定しました。

どのようにして中国のミレニアル世代をターゲットにするのですか?

中国のミレニアル世代の多くは旅慣れており、インターネットを使いこなし、適応力にも優れています。こうした消費者は、それまで“トレンドフォロワー”であったアジアのアイウエア市場の展望を大きく変えました。ヨーロッパや米国でのベストセラー製品をアジア向けにすることで、アジアでもベストセラーとなることがほとんどでしたが、いまでは、アジアのミレニアル世代の消費者は、形、レンズ、色、素材において独自のニーズがあります。こうした市場では、カスタマイズ製品とコミュニケーションが成功の鍵となります。ケリング アイウエアではローカルのデザインチームがアジアの市場に合った形、スタイル、パッケージ、フィッティングの開発に取り組んでいます。中国のミレニアル世代に興味を持ってもらうため、ローカルのマーケティングキャンペーンやデジタル面での活性化において、WeChatやWeiboなどの中国の大手ネットワーク、さらにはHypebeastのような新興メディアを頼りとしています。ケリングのブランドとのコラボレーションによって、グッチに女優のニーニー、サンローランに歌手で俳優のズータオなどのローカルなブランドアンバサダーを広告キャンペーンに起用しています。

ケリング アイウエアが掲げる目標を教えてください。

私たちの目標は、ケリング アイウエアという会社をサステナブルな方法で成長させることにあります。それは、デザイン、品質、流通に特化しながらも私たちのミッションを貫くことです。それに加えて、収益性をさらに高めることにも注目しています。完全な統合とオートメーション化を果たしたロジスティクスセンターのおかげで、バリューチェーンをより厳しく管理できるようになりました。とりわけ東南アジアや中東においては厳選されたリテーラーの力を借りることで、世界的なプレゼンスも高まっています。さらには、Eコマースという新しい流通チャンネルの強化にも力を入れています。Mytheresa.com、Netaporter.com、Matchesfashion.com をはじめとする、世界屈指の E ファッションリテーラーとの既存の戦略的パートナーシップの拡大をはかる一方、従来のリテールにおいても革新的なビジネスモデルを構築しようとしています。エンドカスタマーの体験をより良いものにする方法として、私たちはラグジュアリー感あふれる環境で製品を美しくディスプレイする“ショップインショップ”というコンセプトにも取り組んでいます。私たちにとって大切な、トップクラスのパートナーとともに、今後もこうした計画を実施し、さらには、マーケティングツールや流行に敏感な人々を対象として活用していくつもりです。Coterie とのパートナーシップによって2018年5月には北京の三里屯に初のショップインショップをオープンしました。ケリング アイウエアでは、プリスクリプションフレームカテゴリーとジェンダーレスなスタイルを強化することで、製品ラインナップの充実化をはかっています。さらには、2019年のはじめにバレンシアガおよびリシュモングループからモンブランがケリング アイウエアのポートフォリオに加わります。彼らのクリエイティブなビジョンが映し出された唯一無二のコレクションによる大きな成功を期待しています。