魂を込めたプログラム

ケリングは2015年からカンヌ国際映画祭の オフィシャルパートナーとして、映画界に貢献する女性に光を当てるプログラム、‘Women in Motion’を開催しています。ケリングのチーフ コミュニケーション&イメージ オフィサーで あるヴァレリー・デュポールが、このプログラムをどのように発足させ、発展させてきたか、 また今後の展開について語りました。

Valérie Duport
Directrice de la Communication et de l’Image de Kering

2015年5月に発足した‘Women in Motion’の始まりはどのようなものでしたか?

すべてはカンヌ国際映画祭の総代表であるティエリー・フレモーとケリングの会長兼CEOであるフランソワ=アンリ・ピノーの話し合いから誕生しました。当時、カンヌ国際映画祭は新しいオフィシャルパートナーを探していました。グループとして、ケリングはこのような規模のパートナーシップを結んだことはありませんでしたが、ラグジュアリーブランドと映画は常に特別な絆で結ばれてきたため、このタイアップには大きな意味があると感じました。映画によって掻き立てられるインスピレーションは、俳優や女優と通じて体現されています。我々のようなブランドの多くは、長年映画産業との関わりを持ってきました。たとえばグッチは、ヴィスコンティの『山猫』やフェリーニの『甘い生活』などの映画史に残る傑作の復元に尽力しています。また、サンローランもブリュネルの『昼顔』の復元をサポートしており、ブリオーニは1995~2006年までジェームズ・ボンドに素晴らしい衣装を提供してきました。ケリングにとって極めて重要な課題は、グループおよびブランドのどちらにとっても意味とビジビリティがあるパートナーシップを作り出すことでした。それは単に、ロゴをポスターに載せるだけでは不十分です。ラグジュアリーグループとして、我々はそこに魂を感じさせる特別な思いを込めたいと考えていたのです。さらにグループの舵を取る経営陣には、常に女性が多くいました。ケリングの執行委員会は、CAC40の企業の中でも最も女性役員が多いのです。またケリングファンデーションを通じて、10年以上前から女性に対する暴力根絶のための活動を支援してきました。フランソワ=アンリ・ピノーは、これを文化および芸術分野、特に人々の考えや行動に大きな影響を与える映画の世界において挑む絶好の機会だと捉えました。このような考えのもと、映画界における女性の役割、また貢献する女性に光を当て、男女平等の実現に向けた取り組みを推進するプログラムとして‘Women in Motion’を発足させました。

プログラムはどのように構成されていますか?

‘Women in Motion’は、トークとアワードという主要な2本の柱を中心に展開しています。トークでは、著名人、女優、ディレクターやプロデューサーを招いて、この問題におけるそれぞれの体験や意見を活発に議論し合うフォーラムを開催しています。ジョディ・フォスター、フランシス・マクドーマンド、ジュリエット・ビノシュ、サルマ・ハエック=ピノー、クロエ・セヴィニー、アニエス・ヴァルダなどを招いて行われたトークは、一般公開の場で貴重な意見を交わす絶好の機会であることを証明しました。

‘Women in Motion’アワードは、映画産業および女性の地位向上の双方に貢献した人物に与えられる賞です。プログラムの発足以来、ジェーン・フォンダ、ジーナ・デイヴィス、スーザン・サランドン、イザベル・ユペールらがこの賞を受賞してきました。

もうひとつの賞であるヤング・タレント・アワードは、若く才能ある女性監督に与えられる賞で、進行中の映画プロジェクトのために製作資金5万ユーロが授与されます。今年は2016年のヤング・タレント・アワードの受賞者である、ガヤ・ジジの初監督作品『My Favorite Fabric』がカンヌ国際映画祭の「ある視点」部門にノミネートされました。

プログラムとグループのブランド、カンヌ国際映画祭でのプレゼンスをどのように関連付けていますか?

これには2つの面があります。まず、このパートナーシップによってグループが行っている女性問題および男女平等への取り組みを一般の皆さまに伝える機会を得ています。同時にケリンググループのブランドは、カンヌ国際映画祭とのつながりを持つことができ、そこでブランドらしさを表現したり、コミュニケーションをとることができます。たとえば、セレブリティがレッドカーペットに登場するための準備をマジェスティックホテルにある各ブランドのショールームで行なったり、各ブランドのお客様を招待してユニークなレッドカーペット体験を楽しんでいただくこともできます。

今年の‘Women in Motion’アワードは、『ワンダーウーマン』の監督、パティ・ジェンキンスに贈られることになりました。まさにこのアワードにふさわしい人物です!

現在まで、アワードはスーザン・サランドンやイザベル・ユペールなどの有名女優たちに贈られてきました。彼女たちは、それぞれのキャリアを通じて映画に登場する女性たちに対する固定観念を打ち破ってきました。重要なことは、このプログラムの対象は女優に限定されたものではないということです。監督やプロデューサーであるか、カメラの向こう側にいるかこちら側にいるかに関わらず、女性は同じ壁に直面しているからです。こういった意味で、映画監督、脚本家、プロデューサーという職業に対する固定概念を打ち破ってきたパティ・ジェンキンスは、まさにこのアワードにふさわしい人物です。彼女は、1憶ドルもの興行収益を記録した大ヒット作を監督した初の女性であるだけでなく(『ワンダーウーマン』は2017年最大のヒット作)、男性がほとんど独占してきたアクション映画を撮った初の女性監督でもあります。女性の共感を呼び、好奇心を掻き立て、元気づけるキャラクターを作り出すことで、彼女は映画における偉業を達成したのです。彼女にこのアワードを贈ることができ、我々はとても誇らしく思っています。

プログラムは発足からどのように変化しましたか?

カンヌ国際映画祭が開催される2週間の間に、映画界における女性について議論を交わす場を設けたことは、すでに多くの人々に刺激を与えています。年々この問題は重要性を増しています。特に今年は、2017年の深刻な告発を受けて、我々のプログラムは議論の核心として取り上げられています。ですが、カンヌ国際映画祭という枠に捕らわれることなく、2016年から継続的にこの問題について議論すべきだと考えてきました。このような考えのもと、サンダンス・インスティテュートの協力によりアメリカ国内でトークを開催する試みを始めました。サンダンスに始まり、ニューヨーク、中国、日本、そして最近ではRencontres 7e Art Lausanne映画祭でもトークが開催され、ロッシ・デ・パルマが登壇しました。‘Women in Motion’を映画だけに限定せず、写真などその他のアートにも発展させていきたいと考えています。これらの理由から、ケリングでは南フランスで毎年開催される写真祭、Rencontres Photographiques d’Arlesの中で、「Madame Figaro Photo Awards」をサポートしています。今後、映画以外のカルチャー分野においてもサポートを行っていきます。ケリングが強く意識するのは、自分たちの行動に一貫性と意味があり、誠実であるということです。

成果という点で、最も誇りに思っていることは何ですか?

2017年に沈黙が破られ、問題が明るみになったことは大きな前進です。人々は疑わしいと思ってきた出来事について確信をもって口にするようになり、我々がこの問題をさらに深く検討するためのエネルギーを与えてくれるようになりました。今年になって、映画産業および政治の世界における数多くの人が我々のプログラムに賛同する意志を表明し、トークに参加したいと自発的に連絡をくださっています。映画産業の主だった方たちが、我々の活動を理解し、尊重してくれていることを示しているとティエリー・フレモーとピエール・レスキュールは繰り返し述べています。歴史は目の前で作られています。ケリングにとって重要なことは、この世界で巻き起こる変化に対応していくことであり、限界を超えるために何ができるかを考えることです。