ミレニアルマインドセット」がもたらす影響

ラグジュアリーアイウェア分野は、顧客層の中核が若年層となり、ブランドの挑戦と機会を平等に生み出す新たなステージへと変化しつつあります。世界有数の経営コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー ミラノ支社のパートナーで、ラグジュアリーグッズやファッションの深い専門知識を有する同社のコンシューマー製品・リテールプラクティスのリーダーを務める、クラウディア・ダルピツィオが、これらの消費者の特徴と彼らのラグジュアリーへのアプローチを語ります。

Claudia d’Arpizio
Partner in the Milan office of Bain & Company

近年のアイウエア市場の主な変化は何ですか?

ミレニアル世代の到来に伴い、ラグジュアリーアイウェア市場全体にわたって消費者基盤に大きな世代交代がありました。この世代は昨年のラグジュアリー市場における成長の85%を占め、全製品カテゴリーにわたってラグジュアリー消費に対する異なる価値観を提示しています。ミレニアル世代の価値観と、ブランドと消費者の間で繰り広げられるコミュニケーションは、他の世代にも影響を与えており、「ミレニアルマインドセット」を生み出しています。

もう1つの変化は、アイウエアがかつてのように、エントリープライスの商品としても、流通の面においても、ラグジュアリーブランドをより身近な存在にするアイテムとしてみなされなくなったことです。今日、ミレニアルマインドセットを持つ消費者は、買い物全般、特にラグジュアリーグッズという観点から「ポストアスピレーショナル」と呼ばれており、これは、理想のライフスタイルを手に入れる手段として製品を購入するのではなく、情熱や興味を表現する手段として製品を購入することを意味します。

こうした変化は、アイウェアブランドにとって何を意味しますか?

洗練された方法でブランドのナラティブを伝えなければならないことを意味します。実際、主要カテゴリーよりもアイウエアにさらに創造性と革新を投入する必要があると思います。アイウエアの消費者は洗練されており、欲しい物を指名買い、しかも手頃な価格で最高のものを手に入れたいと考えています。また、彼らは非常に重要な自己表現のアイテムとしてアイウエアを捉えています。

ミレニアルマインドセットを持つ顧客の典型的な特徴を教えてください

こうした消費者には、態度から慣習、時間とお金に対する考え方、経験や地球への配慮を重視するなど、様々な共通の特徴があります。第一に、使用機会や性別、年齢に結びついたラグジュアリーグッズの伝統的な慣習が崩れつつあります。つまり、ラグジュアリーのカジュアル化が進んでいるのです。第二に、これらの消費者頻繁に旅行に出かけ、テクノロジーとインターネットを活用し、時間はお金よりも価値があると考えるという、ある程度の共通性があります。彼らにとって、有意義な時間を過ごすことは、お金を適切な方法で使うことよりも重要なのです。製品の希少性はもはや価値がないか、必ずしも高級品と結びついているわけではなく、それを求める忍耐力も必要ありません。

ミレニアル世代は、経験から学ぶ世代でもあり、彼らの人生のあらゆるステージは、自身の物語のエピソードとして捉えられています。これは、アイウエアにとって非常に重要なことです。なぜなら、アイウエアはこれまで、製品が路面店で販売されていなかったため、常に製品と強く結びついており、顧客の経験とは結びついていない、極めてビジネスに基づいたカテゴリーだったからです。今日のアイウェアブランドは、ソーシャルメディアを通じて、流通チャネル以外での顧客体験を構築しなければなりません。

もう1つの要素は、マインドフルネスです。ミレニアル世代は、地球と人類の未来に関心を持っています。「企業の社会的責任」という視点からブランドを捉え、CSRの価値観を共有する企業に対しては、より多くのお金を費やしたいと考えることもあります。透明性と本物であることもまた、特に消費者がインターネット上であらゆるものを見つけることができる現代において非常に重要です。ブランドは、ただ流行を追随するのではなく、オーセンティックで説得力がある、独自の方法でブランドのストーリーを伝える必要があります。

このような市場で成功する鍵は何でしょうか?

幸いなことに、ミレニアル世代はブランドストーリーが自分たちに深い理解を示し、刺激を与えてくれると感じたら、ラグジュアリーブランドの戦略にすばやく、そして強く反応してくれます。成功しているブランドは、若い世代に焦点を当てています。コミュニケーションの領域を広げ、彼らの情熱や価値観とつながっています。アイウエアに関しては、マーケティングとコミュニケーションを再考することが、製品の再考よりも一層重要になると考えます。言うまでもありませんが、創造性と革新を中心に据えなければなりません。その上で、成功する鍵は、巧みなコミュニケーションと驚きの効果により、ブランドのウェブサイトや店舗を訪れる理由を人々に与えることだと思います。ト

デジタルメディアとソーシャルメディアは、どのような役割を果たしていますか?

デジタルメディアやソーシャルメディアは、こうしたブランドのコミュニケーションや経験を日々実現し、ターゲットとなる消費者向けにカスタマイズされた方法ですばやく提供することができます。ソーシャルメディアは、ブランドと消費者の距離を縮め、コミュニケーションの頻度を増やしてくれる、非常に強力な推進力です。もちろん、伝えたいメッセージがなければソーシャルメディアを活用することはできません。ブランドにとっての課題は、非常に創造的な製品と優れた品質を実現するだけでなく、適切なコンテンツ、すなわち人々が文字どおり心から賛同できるストーリーを提供することです。グッチはこのアプローチを実行し、革命を起こしました。グッチは素晴らしい製品を提供するだけでなく、他のブラントとは異なる方法で消費者と関わり、コミュニケーションを取ってきました。消費者は次に何が起きるのかを楽しみに待っているでしょう。

市場の最終ステップである流通をどのように捉えていますか?

多くのメーカーは直接流通を行っておらず、パートナー企業に依存しているため、流通はアイウエアにとって重要なタッチポイントとなっています。消費者がどのように変化してきたかについて、ブランドは見解をパートナー企業と共有する必要があります。これは、おそらくケリングアイウェアにとって重要な課題となるでしょう。ブランドのDNAを伝えるだけでなく、他のタッチポイントとは異なる体験を提供するために、流通におけるすべてのステークホルダーと適切な方法でパートナー提携を結ぶことが重要です。ブランドは一貫したストーリーを提供する必要がある一方で、ミラノもしくはニューヨークでアイウエアを買うことは、消費者にとっては異なる経験に感じるはずです。流通の最後まで完全に管理することはできませんが、少なくとも顧客体験の一部である必要があります。将来を予測できる人は誰もいません。ですが、こうしたブランド独自のコミュニケーションを確立し、戦略を段階的に微調整することが不可欠となるでしょう。