ケリングの物流の進化を表す、トレカーテの物流ハブの5つのポイント

2019年、ケリングはミラノから55km離れたトレカーテで、新しい物流ハブの建設に着手しました。2020年に操業をスタートさせた16万平方メートルに及ぶ最新鋭の施設は、ケリングの各ブランドのヨーロッパにおけるすべての物流を取り扱います。革新的で柔軟な対応ができ、環境にも配慮したこの新拠点は、ケリングのビジネスプロセスの進化を示す画期的な存在です。物流と保管を一元化することで、各ブランドは市場からの増産の要求や、スピーディーでシームレスな体験が欠かせない今日の消費者の高い期待に応えることができます。本稿では、トレカーテの新しい物流ハブがグループに新たな時代をもたらす5つの理由をご紹介します。

The solar photovoltaic system installed on the hub’s huge roof surface represents an area the size of nearly 20 rugby fields.

オペレーションと戦略が合体

今日の消費者は、より多くのことを期待しています。すべてのチャネルにおいて完璧なデリバリーと体験を求めており、さらには迅速さも要求しています。トレカーテにできる物流ハブはケリングの物流とオペレーションに関わるビジネスプロセスを1つの施設に集中させることで、エンドツーエンドでのサプライチェーンのビジョンを実現しています。つまり、製品をより入手しやすくなり、在庫レベルが最適化され、各店舗に配送するものだけでなくお客様に直接お届けするものも含め、より迅速な流通が確実に行えるようになったのです。スイスにあったこれまでの流通体制は、急激に拡大する需要に間に合わせるため20カ所に分散し、飽和状態にありました。一方、新しい物流拠点はマルチチャネルのサービスに1カ所からアクセスできるため、リードタイムの短縮や荷物1個あたりのコストの削減など、ビジネス上のメリットも極めて大きいと言えます。また、各ブランドにも大きなメリットがあります。トレカーテの拠点で物流や保管のためのリソースを共有することで、各ブランドはエネルギーを自由に解き放ち、創造力や卓越した実行力、お客様への対応やコミュニケーションといった本質的な部分に集中できるのです。

適切な規模で、拡張も可能

オムニチャネルの物流・供給のハブとなるトレカーテのユニークな施設は16万平方メートルの規模を誇り、ケリングのインフラ面のニーズと、現在および今後予測される量的な需要増に対応できる大きさとなっています。2022年に最大能力に達する予定のこの設備は、物流プロセス全体を管理・効率化することができ、すでに現在の出荷・保管能力はスイスの旧設備の2倍に上ります。また、ミラノやトリノ、マルペンサ国際空港などイタリアの主要輸送拠点からもアクセスしやすい場所にあります。グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、サンローランはすでにこのハブを利用しており、RTW、シューズ、シルク製品、レザーグッズ、そして一部のEコマースの取り扱いを開始しています。

trecate platform
The Trecate site enables to improve product availability and to optimize stock levels.

この物流拠点の大きな特徴の一つは、優れた柔軟性です。これにまつわるエピソードとして、この拠点は新型コロナウイルスが大流行した際に重要な役割を果たしており、ケリングのヨーロッパ在住の全社員に必要な個人防護具はすべてここから出荷され、23カ国700拠点に届けられました。12ヶ月間に満たない間に、この新しい物流センターからは900万枚の医療用マスク、19万本の消毒ジェル、240万枚の消毒用ウェットティッシュ、370万組の手袋が出荷されています。

エネルギーの収支がプラス

トレカーテの物流ハブは、環境面でも極めて優れた成果を生み出しています。完全に稼働すると、消費するエネルギーを上回る量のエネルギーを作り出すのです。この施設の機能は最先端の技術とクラス最高のサステナビリティを誇り、たとえばラグビー場約20面分に相当する広大な屋根の上には、(欧州で最大級の)大型太陽光発電システムが設置されています。この施設が生み出す太陽光エネルギーは倉庫での必要量をはるかに上回るため、余剰分はイタリアの送電網に送られ、国内にあるケリングのオフィスや店舗に配電されます。ここで生産された余剰エネルギーは非常に多く、ケリングのイタリア国内の店舗やオフィスで消費される電力のほとんどを賄うことができるほどです。また、施設内はエネルギーや水の使用量を節約できるように設計されています。

さらに、建物は内装や構造の設計に関するLEED認証(Leadership in Energy and Environmental Design、欧州で最も広く普及している環境にやさしい建築物の認証制度)を取得する予定で、予備認証ではすでに最高レベルのプラチナを取得しています。

雇用の創出

物流ハブは直接的、また間接的な形でピエモンテ州に新たな雇用を創出しています。トレカーテの施設では、(物流パートナーのXPO社が雇用主となる形で)2022年までに少なくとも950人の雇用を見込んでおり、その職種はオペレーション・マネージャーからエンジニア、安全や設備に関するスペシャリスト、カスタマーサービス・アソシエイト、ストック・コントローラーまで多岐にわたります。さらに、雇用が増えれば地域内の関連商品やサービス、ショッピング、教育、娯楽に対する需要も増加するなど、外部にもプラスの効果をもたらします。

健全な職場

トレカーテの物流ハブは、効率性を最大限に高めつつ、最高水準の労働環境と心身の健康を守る職場を提供できるように構築されています。設計からオペレーションまでのプロセス全体が、国際的に認知されているグリーンビルディング協会(Green Building Council)の下で運営されているWELL認証制度に基づいており、真に健康的で快適な職場環境を実現しています。その施策として、換気の強化や空気の質の管理、室内の温度および湿度の最適化、人間工学に基づいたワークステーション、一人ひとりに合わせて調整可能な照明、騒音の低減、排出ガスの抑制、リラックスやフィットネスのためのエリア、健康的でレベルの高い社員食堂などを整備しています。