“私たちのジュエリーは、身につけてもらうためにある”

2011年からブシュロンのクリエイティブ・ディレクターを務めるクレール・ショワンヌは、日々の仕事において自由な創造とたゆまぬ革新を続けるとともに、160年の歴史を持つメゾンの価値観を大切に守っています。それは創業者フレデリック・ブシュロンが当時行っていたアプローチと同様のものであり、ヴァンドーム広場26番地の本店リニューアルにも反映されています。

Claire Choisne
Creative director - Boucheron

 

ヴァンドーム広場26番地の本店リニューアルについてどうお考えですか?

多大な敬意をもって行われたと思います。大きさでごまかそうとしたり、無理に現代的にしようという考えは一切ありませんでした。ヴァンドーム広場26番地の本店は建造物としては長い歴史を持ちながらもステータスではなく顧客体験を重視する点において、ハイジュエリーメゾンとして非常に現代的なアプローチを取っている店舗です。売り場というより私邸にいるような温かい雰囲気があり、ブシュロンの商品価値を一層引き立ててくれます。私たちはこれと同じ価値観を持ってジュエリーを作っています。

ブシュロンの顧客も同じ価値観を持つ方が多いのですか?

ブシュロンをまとう女性のタイプは唯一ではありません。皆それぞれに異なる中、1つだけ共通している点があります。それは、彼女たちがジュエリーそのものを愛しており、実際に身につけることが大好きだということです。顧客が美しいものを愛することは、私たちにとって最高なことです。というのも、我々は美しいジュエリーを作るために非常に長い時間と手間をかける事が好きだからです!私が持つデザインアイディアや、感性・信頼性・創造性を重視する価値観と完璧に合致しています。大切なのはゴールドやダイヤモンドを売ることではなく、顧客が楽しんで身につけられるような独創的なジュエリーを生み出し、提供することです。

ショワンヌさんの独創的なアプローチに影響を与えるのはどんなものですか?

フレデリック・ブシュロンの「提案はするが、押しつけはしない」という言葉に心から共感を覚えます。古くから続く伝統的なアプローチは、高級ブランド全般、特にジュエリー業界ではますます受け入られにくくなっています。私はハイジュエリーにおける古い規範を打ち破り、型にはまったアプローチには背を向けるよう、スタッフを促しています。今日では、ハイジュエリーとシンプルなジュエリーを合わせたり、異なるコレクションをミックスしたり、自由にジュエリーを身につけることが自由にできるはずです。その好例が新しい「ジャック ドゥ ブシュロン」です。オーディオ・ジャックの形をした金具がついたジュエリーで、着脱も組み合わせるのも非常に簡単です。好きなように身につけることができるのです!長さのバリエーションがあり、いくつか繋げることも可能で、ブレスレットやネックレス、ベルトとしても使えます。自由そのものなのです。

ブシュロン伝統の精神と現代性のバランスをどのように取っていますか?

無理に現代的になろうと努めてはいません。というのも、これまでブシュロンは常に現代的であり続けてきたからです。過去の資料を見るとわかりますが、メゾンはデザイン面でも技術面でも、素材面でも常に時代の先を走ってきました。私のお気に入りのアイテムのいくつかは、フレデリック・ブシュロンが発明したものなのです!フレデリックは自然から多くのインスピレーションを得ており、特に彼の初期作品の野ウサギを思わせるものなどを見ると、彼が当時の技術を駆使して、可能な限り写実性を持った作品に仕上げていたことが明らかにわかります。ブシュロンの160周年を記念してデザインされた「ナチュール トリオンファント 」コレクションでは、彼の当時のアイディアを最大限に活用しました。現代の技術を可能な限り活かして、花を実物に近い形で表現する方法を生み出したのです。純粋な美的観点から見て、これらのアイテムは非常に先駆的でそれまではなかったものです。しかし、現代的でありつつもブシュロンの基本的な価値観はすべてのコレクションに共通しています。それこそがヴァンドーム広場26番地本店に見られる価値観です。

ブシュロンにはどの程度デザインの自由がありますか?

比類ないほどの自由です。「ナチュール トリオンファント」コレクションの制作においては、最終的な仕上がりについて確証はないまま、すべての工程において大きな投資がなされました。エレーヌ・プリ・デュケンは真の芸術作品を求めていて、私の自由な創造をサポートしてくれています。これはクリエイティブスタッフにかなりの自由を与えてくれる人間味あふれるケリングの価値観と合致しています。ケリングの価値観、ブシュロンの精神とアイデンティティ、エレーヌが抱く大志、私の創造的なアプローチ、そしてもちろん顧客との間には、まさしく真の尊い繋がりと連携があるのです!