ブランドとそのオーディエンスのための特別な機会

JCDecaux Airport Paris(JCDecauxとParis Aeroportが所有する合弁会社)のCEOであるイザベル・フールマンは、トラベル  リテールをブランドがオーディエンスとの関係を構築する特別な機会と考えて  います。このチャンスを活かすためには、ブランドは店舗体験におけるコミュニ  ケーションに重点を置く必要があります。急速な成長を遂げている流通チャネルの主な動向について見ていきましょう。

Isabelle Fourmentin
CEO of JC Decaux Airport France

消費者の増加に直面する空港に店舗を構えるブランドにとって、コミュニケーションにおける重要な課題は何ですか?

イザベル・フールマン:トラベルリテールにおける直接的なプレーヤーではない、空港広告の  世界的なリーダー企業であるJCDecauxにとって、搭乗客に関する理解を深めることが最大の 課題です。乗客の習慣や、彼らが期待することに関しての知識を持つことは、ブランドが乗客の ニーズを最善の方法で満たすことを意味します。2つ目の重要な課題は、オンライン上で    行われる旅行に伴うあらゆる手続きや準備を、空港での実体験と融合させることです。つまり、 デジタルスペースと実店舗を結び付けるのです。これを実現するために、ブランドが潜在顧客の母語で彼らと接することのできる、広告用ハードウェアを過去3年間提供してきました。ブランドは出発時刻に基づいて、ターゲットオーディエンス向けに店舗の最新情報や人気商品のハイライトを含む、特別にカスタマイズされたコミュニケーションを構築することができます。例えば、お昼前に中国行きの便がある場合、午前10時から広告言語を中国語(標準語)に切り替えることが  できるのです。こうしたアプローチは、化粧品やフレグランスに特に有効です。

搭乗客が抱く新たな期待やニーズとは?

乗客のニーズや期待は多様化しています。その一方で、いわゆる「グローバルショッパー」と  呼ばれる顧客の期待は、極めて標準化されています。特にラグジュアリーやビューティー部門においては、グローバルショッパーは大手ブランドの商品を望んでいます。その一方で、ミレニアル世代は本物であることを求めています。例えば、アムステルダムとニューヨークでの異なる    コンシューマーエクスペリエンスを望んでいるだけでなく、彼らは店舗体験に驚きの要素も求めています。ミレニアル世代の場合、購買経験がパーソナライズ化されるほど、そしてブランドの   コミュニケーションがより直接的であればあるほど、より良い結果が得られるのです。

ラグジュアリーブランドのコミュニケーションを、こうした多様なオーディエンスに適合させる方法について教えてください

空港が大規模なインフラ投資を行い、店舗改革を実施したことにより、乗客のエクスペリエンスは明らかに向上しました。この傾向は、上海やシンガポールといったアジアの主要な拠点で始まり、ドバイのメガサイズの空港へと波及しました。その後、欧州空港もこれに続き、パリの各空港は2005年以降大きな変革を遂げています。インフラの段階的な改修により、現在ラグジュアリー ブランドは理想的な天井高を備えた、より広大な店舗を展開しています。これにより、デジタル コミュニケーションと独自の店舗体験を利用して、乗客がサービスを利用できる時間を最大限 確保し、空港内での差別化を図ることができるようになりました。ショッピングの喜びを再燃させる様々な方法も、容易に検討することができます。例えばAR技術を活用して、特定の商品が  生み出される際のあらゆるノウハウを刺激的な方法で紹介したり、時計の機構を3Dで表現   すれば、高級時計愛好者の人気を集めるかもしれません。

JCDecauxは、空港広告の将来をどのように見ていますか?

搭乗客は毎年2億人ずつ増加しており、今後15年間で航空交通量は2倍に増えると予想   されます。そのため、私たちは将来について非常に楽観的な見方をしていますが、空港で収集 したデータを活用し、顧客に関する知識を向上させることが鍵となると考えます。例えば、収集 したデータを当社のサービスに適応させ、各ターミナルに提供することで、サービスの柔軟性を高めることができます。乗客が空港のWiFiに接続すると、言語をはじめとした乗客の情報を  素早く把握することができ、ターゲットを絞った広告を打つことができます。プライバシーポリシーに関する規制が厳しくなる一方、私たちは人々の私生活に侵入するのではなく、匿名化された データや集計されたデータを知識に変換することを目指しています。すなわち、データはブランドが顧客の多様なニーズと期待に応えることを可能にするリソースなのです。

もう1つの重要な推進要因は、インフラの継続的な改善です。これには、2019年のオルリー  空港の西ターミナルと南ターミナルを結ぶターミナルの新設や、オリンピック競技大会がパリで 開催される2024年までに、年間3,000万人の乗客に対応できるロワシー シャルル ド ゴール国際空港の第4ターミナルの開設が含まれます。こうしたユニークな環境において、ブランドは オーディエンスとの積極的なコミュニケーションを図り、世界中の消費者を対象に商品をテスト することができるのです。消費者の購買行動を促進するには、店舗体験やデジタル通信によって消費者の感情を刺激する必要があります。また、商品に関するより多くの情報を消費者に提供 しなければなりません。

今後、空港に店舗を構えるブランドがデジタルテクノロジーによる広告やPR活動に注力する傾向がますます強まっていくでしょう。ファッションショーを巨大なスクリーンで放映したり、空港に特化したコンテンツが提供されるようになるかもしれません。ラグジュアリーブランドは、トラベル    リテール向けの特別なコンテンツを作成し、特殊な環境である空港に適した手法でコミュニ   ケーションを図ることが重要です。